水竜族は属性竜人のひとつであり、北西端の高地に住んでいる。
水竜術を用いて水から水へと渡る彼らにとっては、交易の根底を覆すことができる。
無尽蔵に金銭を稼げる水竜族たちであるが、その衣類は非常に質素かつ簡素である。
今回は、水竜族たちの衣類へのこだわりとその特徴について。
歴史的に、布地が希少だった
かつての水竜族は他種族との非接触を徹底していた。水と水産資源を自在に入手できる彼らであったが、石材・木材といった建材や生活の様々なものが不足していた。というのも、彼らの住処は標高2000mほどの開けた高地であったためだ。遠方から細々と資材をかき集めることに限界を感じた水竜族たちは山を降り、そこに住む集落と取引を始めた。その中でも水竜族にとって珍しく、人気があったものが衣類用の布だった。
水竜織りの発展
布の入手以前は貝類や海藻をベースに即席の衣類を用意していた水竜族にとって、使い捨てではない衣類の入手は革命的だった。平たい布地をどのようにして海藻のような華やかさをもたせるかが彼らにとっての新しい課題だった。これにより考案されたのが、3層からなる水竜織りの文化である。海藻のもつたわみをフリルで、揺れる華やかさを毛束で表現し、1層目の薄布の上に毛束、フリルの順に積み上げた。このフリルの下から毛束が覗くパーツを襟、袖、裾などさまざまな場所に取り付けたり、重ねて巻きスカートにすることもあった。
水竜織りはアイデンティティ
最初に述べた通り、水竜族は水から水へと移動ができるため、交易によって金銭を稼ぐことができる。しかし水環境保護のために働く彼らにとっては、他種族の経済環境もまた保護すべきものであるという倫理教育が徹底されている。彼らが現地で得る貨幣はその地での生活のためであり、彼らにとっての水竜都での贅沢とは、より多くの文化の民芸品を自分だけの棚に並べることであった。こうした背景から衣類を持ち帰ることはあっても民芸品として棚を飾るためであり、根本的に新たな衣類を求めていない。水竜族が散見されるようになった現在では、水竜族は水竜織りを纏ってこそという自負が浸透しており、彼らは自身を示すアイコンとして水竜織りを身に纏っている。